建築事例

つくり上げるプロセスも楽しんだ、家族をつなぐアウトドアダイニング

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お施主様:SK
インタビュー時期:2024年7月

お施主様へのインタビュー

Interview with Our Clients: Insights into Their Vision and Experience

建築の経緯・憧れの八ヶ岳

八ヶ岳は学生時代によくスキーに来ていて、いつか住んでみたいと思っていました。八ヶ岳でかならず名前が挙がる建築会社と言えばオルケアさんです。ホームページを検索すると、水道の凍結対策がいらないと書かれてある点に目が留まりました。なるほど、そうした面も大事だなと思っていたとき、たまたまオルケアさんの会社の前を通りかかったのです。その建物がとてもよかったことが電話をかける直接のきっかけになりました。

窓へのこだわり

彦根明先生のことは、紹介されるまで何も知りませんでした。彦根先生に参加していただけることが決まってから作品などを調べると、どの建築もすばらしいものばかり。すごいキャリアの方だと驚きましたが、話しにくいところは一つもなく、むしろ似たようなことを考えていたことが多かったように感じています。

例えば、窓枠は一般的に無難な白が選ばれることが多いようですが、彦根先生が多用されるのは黒で、私はまずそこに惹かれました。窓枠が黒だと、フォトフレームのようにスパンと切り取られるので、風景が際立って見えます。また、2階の窓は普通、もっと大きくするところでしょうが、2階はあまり使いませんし、家具が置けなくなるので、あえて小さくしました。私は大きさよりも、窓のアシンメトリーな配置や、不規則に並んでいることのほうが気になります。そうした感覚は彦根先生に近く、構造的な問題で主寝室とキッチンを反転させることになったときも、無駄な出っ張りを無くし、南面を面一に収めてもらいました。ラインがすっきり整い、さらによくなったと思います。

デザインのバランスや合理性

彦根先生には、キッチンのショールームにも同行していただきました。お互いに「絶対にこれしかしかないな」と選んだのが、全く同じステンレス製のシステムキッチン。そうした物のチョイスをはじめ、デザインのバランスや、幾何学的な収まりのよさ、整然と並んだものに合理性を感じるといった視点が、どこか共通していたのかもしれません。

最適解を求め続けた網戸

最後の最後まで最適解を探し続けたのが、家の中心に据えたアウトドアダイニングの網戸です。わが家は40年近くにわたって海外のファミリーと交流を続けており、あちらの週末の過ごし方に倣い、自分も八ヶ岳に家を持ったら、ぜひ家族とバーベキューを楽しみたいと思っていました。

ところが問題は、いちばん気持ちよくバーベキューができる季節に虫が来てしまうこと。初めのうちは、網戸を壁に立てかけ、虫が来たらはめ込むように考えていましたが、そんなことでは間に合いません。彦根先生もオルケアさんも、ずいぶん探し回り、はめ込み式の網戸を見つけてこられたものの、網戸を開けたときにどうしても余計な出っ張りができてしまいます。

最終的にベストの案となったのは、私が見つけてきた折りたためるアコーディオン式の網戸でした。これを彦根先生と現場スタッフがものすごく考えて、外壁に戸袋を作ってくれたものが、おそらくオルケアのアウトドアダイニングの網戸としては、最高傑作になったようです(笑)。

そんなプロセスも含め、自分自身も完成までのプロセスを大いに楽しんだ家づくりでした。今、男の子ばかり孫が4人いて、みんなが集まれる場所をつくりたいと思い建てた別荘でしたが、正解だったと思います。娘や孫たちがこの家に集い、あたらしい物語がここで生まれることを願っています。

建築の概要

Architectural Overview: Key Features and Concepts
所在地域 小淵沢
標高 約1055m
竣工年 2024年
土地面積 299.52坪・990.18m²
建築面積 34坪・112.40m²
構造・階数 木造・2階建

彦根明 コメント

Architect’s Commentary: Reflections on the Design and Process

SK様は、以前ご自宅を建てられたこともあり、建築設備を含めた機械にもお詳しい方で、設計作業を進める過程も存分に楽しまれながら空間やしつらえを決めていらっしゃいました。

このプロジェクトも基本的な間取りと建物の構成が決まったところから引き継がせていただいたのですが、仕上げや機器の選定にあたっては私達だけでなく、SK様ご自身もたくさん調べて比較検討をしてくださいました。SK様が見つけられた製品の中でも最大の収穫はアウトドアダイニングのための、しまうことができる網戸でした。外のダイニングを使わない時期や、虫の少ない時期はなるべく邪魔にならないように格納されていることが求められましたが、考え得る解決策の中でのベストアンサーであったかと思います。

SK様の印象的だったお言葉の中に、「このまま設計事務所で仕事してしまおうかな」というものがありました。本当に、様々な可能性を模索し、該当する製品を比較検討し尽くした上で結論を導き出すという設計作業を楽しまれているご様子が印象的でした。

このお宅のデザイン手法も、可能な限り凹凸を整理しながら全体の形を単純化させ、コスト面でも温熱環境面でも徹底的に無駄を排除していく形にまとめていきました。そのかわり、アウトドアダイニングという特別な場所を象徴的に中心に据えることで、八ヶ岳の自然環境を存分に楽しむことのできる家という部分を強調しています。

住まわれる方のご理解と、作る方の協力がなければできないことなのですが、蹴込み板の無い段板だけの階段やそれを支える方法も、既製品の階段を使いながら普段の注文建築とほぼ変わらない仕上がりレベルでおさめてくださいました。

家の設計はデザインの方向性やものごとの決定方法、お客様の主体性や新しい家で取り入れたいことの具体性まで、人それぞれ様々です。大切なことは出来上がったときに、これこそ自分の家(別荘)であるという満足感を持てることだと思います。